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Channel: Art to People
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目撃者は30人のみ

その彼は普段は現地採用のスタッフとして日系企業で何食わぬ顔をして働いている。けれどもその仮面を脱げば、「怪優」と呼ばれる役者としてタイ以外の国でも知られるとんでもない経験と実力をもつ日本人なのだった。その彼が新人に戻ったつもりで一人芝居の舞台に立つという決断をした。十数年前、私は彼に直談判をしたことがある。私が書いた芝居に出てくれないか、と。一言で断られた。「自分で書いた芝居にしか出ませんから」と。...

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久しの火遊び

食や食材からはつくづく遠く私は生きている。食に興味もなければ味の善し悪しも分からない。鶏、豚、牛、魚の区別くらいつくが、それらの肉の部位がどこだとかここだとか言われても右の耳から左へ抜ける。経験値として蓄積されないのだ。そんな私に、ある芝居仲間がタイの土鍋をくれた。カンカンにおこった炭火の上に丸く居座る、屋台でよく見かけるあの土鍋だ。もちろんタイの「七輪」もセットで付いている。インテリアとしても愛嬌...

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海が呼んでいる

もうすぐ航海に出る。船出をすることになった。九月の下旬にやる二人芝居という海への船出だ。90分間二人だけで演じ続けるバトルロワイヤルになる。観客に笑いながら泣いてもらうこと、それが合い言葉だ。それぞれが同じ台本を持っているのだけれど、読み方がちがう。相手がどう出てくるか分からない。取り舵か面舵か。どんな波が来てどんな風が吹き、どんな海流が先に待っているのか、その戦いがもうすぐ始まる。実際に国を越え、...

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そんな未来

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えんとつ町

日本人学校に通う子供たちの「演劇サークル」にコーチとして関わっている。『えんとつ町のプペル』という絵本があるがご存じだろうか。大ヒットを飛ばしているらしいが、いかんせん、私はまったく知らなかった。けれどもこの絵本を使って今、子供たちと遊んでいる。文章を読むのでも絵を見るのでもない。そのなかの一シーンを、本を捨てて体を使った芝居にしてしまえという遊びだ。選ばれたのは空を飛ぶというシーン。砂浜にうち捨て...

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この映画、なんだべなあ。

なんだべなぁ、これ?タイのイスラム協会かなんかが作った映画なんだけど、ちょい役で出さしてもらいました。「アダム」とかいう題名だけど、私はバンコクの日本人やくざの精神的弱みにつけ込んで金をだまし取るという新興宗教の教祖とやら。オムニバス形式の映画なので全体を見てみないとなにを言いたいのやらわからない。この映画、一般公開はされないらしく、小さなコミュニティの中で上演されていくらしい。画像は映画のポスター...

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夏 日本 2017

今年、10年ぶりくらいで日本の夏の空気を吸った。けれど帰タイ直前、世話になっていた叔父が危篤となった。わたしは復路のフライトをキャンセルした。生まれて初めて人の死を看取り、通夜から葬儀、火葬と納骨や各方面への手続きなどを手伝った。数年間を老人ホームで暮らしていた叔父の実家は鍵がかけられ、開けて入れば昔の記憶のままに保たれていた。釣りが好きで航空ファンでありカメラ好きだった叔父のコレクションの数々は私...

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占い師たち

わたしは将来、大臣もしくはそれに準ずるような地位に就くと言われたことがある。百歳近くまで生きると言われたこともある。もうすぐ素敵な女性と出会い添い遂げるとも。ことごとくが外れ、あるいは外れつつある方向へすすんでいるけれど、これらの言葉はどれも私を慰めたり安心させたりするという目的のためにわざと発せられたものだった。なぜなら、これらの予言をくれた人々こそが最悪ともいえる状況に置かれた占い師たちだったか...

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学生たちの制作プロジェクト

バンコクのランシット大学の学生たちがつくってくれたポスター。元々はある学生が論文のためにインタビューした何人かのうちのひとりが私だったことから始まった。じゃあうちの大学でイベントやってくれませんかという。良いよ、と応えてほっといたらこういうことに。韓国での舞台から帰ってきてすぐに知らされた。もう来週じゃないか。制作に関わる学生たちはマイムの舞台を見たことのない者がほとんどなので照明や音響から一つ一つ...

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ある国の終焉

故郷にいると心は熱さやせわしなさを失う。何もかもが触れてはならないもののように壊れやすく感じられるからだ。6月は空梅雨の故郷にいた。駅のプラットホームへ行こうとしていたとき、向こうの下り階段をよちよち降りようとしているおばあさんを見た。リュックを背負い、両手に荷物を提げている。追いついたとき、案の定、彼女は階段の中ほどで手すりにつかまって立ち往生していた。荷物を持ってあげてベンチについた彼女と言葉を...

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ソウルでのマイムショー

2017年6月25日から7月4日まで、韓国、ソウルの Mullae...

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海辺のリゾート パタヤ

私が海を嫌うのにさしたる理由はない。ただただ不気味なのだ。生きとし生けるものはすべて海から産まれたという。ならば私の感覚は原初的な畏れから来ているのだといっても、そう外れてはいないだろう。とにかく海があると、あ、先になど行けようはずもない、ここで行き止まりだ、と思うのだ。そう、あの頃、すぐそばの国で戦争があり、さびれた漁村だったこの町は外国兵たちの保養地として開発が始まった。大艦隊が沖に停泊し、空母...

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霊の通り道

タイ人は皆、霊の存在を強く信じている。だからこの国では霊も自由に闊歩できる。なんでこんな、というようなことがタイ人の身の回りにはよく起こるらしい。かく言う私に霊感はない。が、昨日の夜中のこと、いつものごとく舞台のあれやこれやを悩みながらいつの間にか眠りこけていたとき、耳のそばで「トッテ・・・」という日本語をささやかれて目が覚めた。ひとりの声ではなかった。何人かの、男女の区別もつかぬ、声。「トッテ・・...

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ソウルでのマイムショー

6月末からの韓国ソウルでの舞台のポスターが送られてきた。仮面を使ったマイムがいいだろうというアドバイスを受け、仮面もの中心にプログラムを立てた。Soul Mime in Seoul といきたいところ。さて、どこまでやれるか。

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これは不幸かハッピーか

昨夜、酔っぱらう。久しぶりに会った知り合いたちの夕餉。破恋(失恋ではない)の話で盛り上がるおじさん3人と青年一人。二次会の呑みに移った。外に雨が降り出した。じゃあこのへんでお開きにしようということで。お店の素敵なママさんが、どうぞ、と渡してくれたのは私の飲みかけの冷えた濁り酒の瓶。わざわざそれを小洒落た紙袋に入れてくれた。外へ出ると少し雨が強くなり始めていた。友はタクシーを拾った。私は高架鉄道を選ん...

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前略おふくろ様

前略おふくろ様。ご無沙汰していましたが、俺生きてます。昨日、目が覚めると自分の手が目の前にありました。このバンコクの、俺の棲家は言ってみれば下町で、朝から結構うるさい音が窓から流れ込んでくるわけで、俺はその音で目が覚めたらしく。でも体は急には目が覚めない。窓から差し込んでくる光をいつの間にか手だけで遮っていたわけで。びっくりしました。死んだ親父さんの手を思い出しました。あなたのようにいつまでたっても...

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駐在員の妻

タイに駐在する日本人会社員の奥様たちのことを「駐妻」という。ご主人の赴任に伴ってこちらへついて来られた奥様たちのことだ。この言葉はもう世間に認められたのだろうか。それとも未だにタイの日本人コミュニティでだけ通じる言葉なのだろうか。今回、ある雑誌から依頼されたコラムのお題が「駐妻ないし駐在員」だった。駐妻だけをお題にされたら私はたぶん悩みに悩んでギブアップしたかもしれない。駐妻とは「家族や子供を抱えた...

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いまの謎

久しぶりにスクンビットの夜の繁華街を歩いた。アソークからソイ3にかけての歩道沿いだ。涼しかった時季が過ぎ、これからやって来るつらく暑い時季への心の準備をしつつのそぞろ歩きだった。そこで、しばらく歩くうちに妙な違和感をおぼえ始めた。何かが違う。そう、露店がないのだ。道路側にいつも出ていた露店たちが、ない。この歩道はついこの間までトンネルを歩くような道だった。ビニールの大傘とテント幕が頭上を覆い、道路も...

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パンドラの酒壺

酒の壺を手に入れた。うりざね型の小さな壺だ。ラオスとの国境あたりでつくられる有名な酒だという。水を注ぐと中に詰められたもち米が発酵し、おいしい酒になるらしい。20分でいけるというし、それをストローで啜って呑んで酔うのだという。紙の封を切ると石膏で固められた第2の封が現れ、それを割ると第3のビニールの封が現れた。開くと中にはびっしりと籾殻が詰まっていた。どうやらここに水を注ぐらしい。それから二日間。私...

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原点に戻った祭夜

「美しい」という形容詞が嫌いだ。書くときにこの言葉を使うことは極力避けようと決めている。この言葉を使うことですべてが読み手の想像力にゆだねられてしまうし、書き手の仕事は無責任に放棄される気がするからだ。今年11月の満月は、普段よりさらに地球に近づいて、いつもより格段に大きく明るく空にかかるというものだった。昇ったばかりの時刻の月は東の空に低く、明るくはあるが霞んだ柿色。これが中空に達し、青いとも白い...

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